インテークとは?
認知症の方のインテークでは、症状や生活状況、家族の困りごとなど、確認したいことがたくさんあります。
そもそも、インテークとは何か?を改めて確認しましょう。
インテークとは
本人や家族から、現在困っていることや生活の様子、これまでの経過などを聞き取り、支援に必要な情報を集めることです。初回の相談や受診時に行われることが多く、情報を集めるだけでなく、本人や家族との信頼関係をつくる最初の機会でもあります。
ちなみに、インテークと混同されやすいのがアセスメントです。
アセスメントとは
インテークなどで得られた情報をもとに、本人の状態や生活上の課題、本人・家族が必要としている支援などを整理し、今後の支援について考えていくことです。
このようにインテークで得られた情報は、その後のアセスメントや診察を行ううえでの大切な手がかりとなり、今後の治療や支援にも役立ちます。
しかし、インテークの目的は、必要な情報を集めることだけではありません。
本人や家族に、病院や施設に対して信頼感を持ってもらうことも、大切な目的のひとつです。
「ここなら話を聞いてもらえそう」
「この人になら相談しても大丈夫そう」
インテークでそう感じてもらえることが、その後の診察や支援にもつながります。
今回は、わたしが認知症の方から話を聞くときに意識しているポイントをご紹介します。
最初に自己紹介をする
まずは、こちらから自己紹介をします。
認知症の方の場合、相手が誰なのか分からないまま質問されると、不安になってしまうことがあります。
そのため、名札を見せながら、ゆっくり、聞き取りやすい声で名乗るようにします。
「○○と申します。今日はお話を聞かせていただきますね」
このように、短く分かりやすく伝えます。
いきなり質問を始めるのではなく、まずはこちらが誰なのかを伝える。
それだけでも、本人が安心して話を始めるためのきっかけになります。
本人に名前と年齢を言ってもらう
自己紹介の後は、本人に名前を言ってもらいます。
「お名前を教えていただけますか?」
続いて、年齢も確認します。
ここで、本人が実際とは違う年齢を答えることがあります。
そのとき、
「違いますよ。○歳ですよ」
と、すぐに訂正するのではなく、
「こちらの書類では、○年生まれの○歳となっていますね。年齢はこちらで合っていますか?」
というように、確認する形で伝えるようにします。
本人の答えを頭ごなしに否定しないことが大切です。
また、年齢はその後の見当識などを確認するときにも使える情報なので、できるだけ正確に確認しておきます。
問診票は「誰が書いたのか」を確認する
認知症の方の場合、問診票を家族が記入していることも少なくありません。
そのため、問診票を見たら、
「これはどなたが書かれましたか?」
と確認します。
家族が記入しているのであれば、そこに書かれている内容を、そのまま本人の認識として扱わないことが大切です。
例えば、問診票に、
「最近、物忘れがひどくて困っている」
と書かれていたとしても、本人は、
「特に困っていない」
と感じているかもしれません。
そんなときは、
「ご家族さんから見ると、最近こういうことで困っているようですよ」
と伝え、本人の認識と家族から見た状況を分けて考えます。
「家族がこう言っているから、本人も困っているはず」と決めつけないことがポイントです。
最初は「お困りのこと」から聞いてみる
インテークでは、確認したいことがたくさんあります。
「眠れていますか?」
「食事は食べていますか?」
「薬は飲めていますか?」
「物忘れはありますか?」
つい、これらを順番に聞きたくなります。
しかし、最初から質問を矢継ぎ早にすると、本人が「何を答えればいいのか分からない」となってしまうことがあります。
そこで、まずは、
「今、お困りのことはありますか?」
と本人に聞いてみます。
本人が、
「最近、夜眠れなくてね」
と話されたのであれば、そこから睡眠について詳しく聞いていく。
「特に困ってないよ」
と言われたのであれば、無理に質問を重ねず、
「お身体で痛いところはないですか?」
など別の話題から様子を見ていくこともできます。
インテークでは、こちらが聞きたい順番ではなく、本人が話しやすいところから話してもらうことも大切です。
物忘れについて聞くときは、一言添える
認知症の方へのインテークでは、物忘れについて確認することがあります。
ただ、
「最近、物忘れはありますか?」
と突然聞かれると、「認知症を疑われているのでは」と本人が身構えてしまうことがあります。
家族から認知症を指摘されていたり、本人も「認知症なのでは?」と不安に思っているところに直接問われてしまうと、頑なに否定されることも少なくありません。
そんなときには、
「○歳以上の方には皆さんにお聞きしているんですが、最近、物忘れなど気になることはありませんか?」
などと、一言添えてから質問します。
「自分だけに聞いているわけではない」と分かることで、質問に対する抵抗感が和らぐことがあります。
もちろん、実際の質問の仕方は、本人の様子や場面に合わせて自然に行うことが大切です。
基本は本人から話を聞く
認知症があるからといって、最初から家族にばかり質問するのではなく、基本的には本人から話を聞きます。
「何に困っているのか」
「本人は今の生活をどう感じているのか」
「どんなことを心配しているのか」
これらは、本人に聞かなければ分からないことがあります。
一方で、認知症の場合、本人から得られる情報だけでは、生活状況や症状の経過などを正確に把握することが難しい場合もあります。
そのため、
本人から話を聞き、そのうえで必要な情報を家族から補足してもらう
という流れが大切になります。
本人の話を途中で否定・修正しない
本人が話している途中で、
「それは違いますよ」
「さっきも聞きましたよ」
などと、本人の話を否定したり訂正したりすることは、できるだけ避けます。
認知症の方が話している内容に事実と異なる部分があったとしても、まずは最後まで話を聞きます。
家族が同席している場合には、家族が善意から、
「それは違うよ」
「昨日も同じこと言ってたでしょう」
「本人は何も分かっていないので……」
などと、途中で口を挟むこともあります。
そのようなときも、家族を否定するのではなく、
「ありがとうございます。まずはご本人からお話を伺ってみますね」
と、やんわり伝えます。
本人の話を聞いた後で、
「ご家族から見た最近の様子も教えていただけますか?」
と、家族から情報を補足してもらいます。
本人には本人の認識があり、家族には家族から見た生活上の変化があります。
どちらか一方を「正しい」「間違っている」と決めつけるのではなく、それぞれの視点として聞くことが大切です。
拒否が強いときは「話さなくてもいい」と伝える
質問に対して強く拒否したり、言葉に詰まったり、答えを濁したりすることもあります。
そんなとき、何とか答えてもらおうとして質問を繰り返すと、本人の警戒心が強くなってしまうことがあります。
そのような場合には、
「話したくないことは、話したくないと言っても大丈夫ですよ」
と伝えてみるのもひとつの方法です。
「答えなければいけない」と思っている本人に、話さないという選択肢もあることを伝えることで、かえって話しやすくなることがあります。
もちろん、安全の確認や診療・支援に必要な情報については、本人の状態に応じて別の方法で確認する必要があります。
大切なのは、答えられないときに、
「認知症だから答えられない」
と決めつけないことです。
「今は話したくないのかもしれない」
という可能性も考えながら、本人のペースを待つことも大切です。
家族から話を聞くときも、本人に一声かける
家族から情報を聞く必要がある場合でも、本人がその場にいるのであれば、本人を置き去りにして話を進めないようにします。
例えば、
「ご家族さんにも、○○さんの最近の様子について少しお聞きしてみてもいいですか?」
と、本人に確認してから家族に話を振ります。
この一言があるだけでも、本人を尊重していることが伝わります。
「家族から聞いたほうが早いから」と、本人の目の前で家族だけに質問するのではなく、本人をインテークの中心に置いたまま、家族から情報を補足してもらうイメージです。
最後は本人と視線を合わせて挨拶する
インテークが終わったら、最後まで丁寧に関わります。
「今日は色々とお話しできてよかったです。ありがとうございました」
と、本人と視線を合わせながら挨拶をして終えるようにします。
認知症の方の場合、面接で話した内容をすべて覚えているとは限りません。
それでも、丁寧に話を聞いてもらったという安心感が残ることがあります。
そして、診察につなげるときには、
「もしかしたら、このあと先生からも同じようなことを聞かれるかもしれません」
と伝えておくこともあります。
診察では、インテークで聞いた内容を医師がもう一度確認することがあります。
あらかじめ伝えておけば、
「さっき話したのに、また同じことを聞かれた」
と本人が戸惑うことを防ぎやすくなります。
認知症のインテークで大切なのは「正解を聞き出すこと」ではない
認知症の方へのインテークでは、本人がすべて正確に答えられるとは限りません。
だからといって、最初から家族の話だけを聞けばいいわけでもありません。
本人から見た困りごと。
家族から見た困りごと。
そして、実際の生活状況。
それぞれを分けて聞いていくことで、その人の状態が少しずつ見えてきます。
そして、そのためには「何を聞くか」だけでなく、「どう聞くか」が重要になります。
まず本人に話してもらう。
話の途中で否定や修正をしない。
必要な情報は家族から補足してもらう。
そして最後まで、本人を一人の人として尊重して関わる。
こうした小さな積み重ねが、本人との信頼関係をつくっていきます。
インテークは、情報収集の時間であると同時に、本人や家族が病院や施設に信頼感を持つための最初の機会でもあります。
「ここなら話を聞いてもらえそう」
「この人は自分の話を聞いてくれる人だ」
と、まずは思ってもらうこと。
「何を聞くか」よりも、「この人なら話してもいい」と思ってもらえる関わりを大切にする。
それが、20年以上医療・介護の現場でインテークに携わってきた、わたしが大切にしていることです。


