嫌がって連れていけない
「病院に行ったほうがいいと思うけれど、本人が嫌がっている」
認知症が疑われるときや、すでに認知症の診断を受けている方に精神科などの受診を勧められたとき、家族が悩むことの一つが「どうやって本人に受診してもらうか」ではないでしょうか。
「病院に行こう」と言っても、
「どこも悪くない」
「病院なんて行かない」
「病気扱いするな」
と拒否されることもあります。
実際に医療現場でも、「本人が受診を嫌がっている」という家族からの相談は少なくありません。
受診への抵抗には、病院への不安だけでなく、「病気だと思われたくない」「何をされるのかわからない」といった気持ちが隠れていることもあります。
病院に行きたがらないときの声かけ5選
そんなときは、ただ「病院へ行こう」と説得するのではなく、本人の気持ちに配慮した声かけを考えてみましょう。
「どうして病院に行きたくないの?」
「病院に行こう」と声をかけても、「行きたくない」と拒否される。
そんなときは、まず、
「どうして病院に行きたくないの?」
と、本人に理由を聞いてみましょう。
「病院が怖い」
「病気だと思われたくない」
「何をされるのかわからない」
など、医療機関そのものに抵抗がある場合もあります。
一方で、
「お金がかかるから」
「保険証をなくしたから」
「予約の取り方がわからない」
「どこに行けばいいのかわからない」
など、実は解決できる理由から受診を拒否していることもあります。
「病院に行きたくない」という言葉だけで判断せず、そもそも、なぜ受診したくないのかを聞いてみる。
理由が分かれば、家族が一緒に解決できることもあります。
「困っていることを相談しに行こう」
「認知症の検査を受けに行こう」と言われると、抵抗を感じる人もいます。
そんなときは、病名ではなく、本人が実際に困っていることを入口にしてみましょう。
「最近、眠れなくて困っていることを相談しに行こう」
「落ち着かないことについて、先生に相談してみよう」
「薬について一度聞いてみよう」
などです。
受診は、病名をつけてもらうためだけのものではありません。
今起きている困りごとについて相談し、原因や対応方法を医療者と一緒に考える機会でもあります。
「私も相談したいことがあるから、一緒についてきてくれない?」
本人だけを「病院に連れて行く」という形にすると、「自分だけが病気だと思われている」と感じることがあります。
そんなときは、
「私も相談したいことがあるから、一緒についてきてくれない?」
という声かけも一つの方法です。
「一緒に行く」という形にすることで、受診への心理的なハードルを下げられる場合があります。
「本人をだますための嘘になるのでは?」と抵抗があるかもしれません。
しかし、現に「心配で受診してほしいけど、本人が行きたがらない」ということも含めて、ご家族も困っている状況に嘘はありません。
その状況を相談するため、病院へ一緒に行くと捉えてみてはいかがでしょうか。
「○○さんも、行ってよかったって言ってたよ」
身近な人の経験が、受診を考えるきっかけになることもあります。
「○○さんも、最初は嫌がっていたけど、行ってみたら相談できてよかったって言ってたよ」
「○○さんも、先生に話を聞いてもらえて安心したって言ってたよ」
などです。
ただし、「○○さんは行ったんだから、あなたも行きなさい」と、他人と比較して説得する形にしないことが大切です。
あくまで「こんな人もいたよ」という情報として伝えましょう。
「まずは話を聞いてもらうだけでもいいんじゃない?」
受診に対して、
「薬を飲まされるのでは?」
「入院させられるのでは?」
「認知症だと言われるのでは?」
など、さまざまな不安を持っている場合があります。
そのようなときは、
「まずは先生に話を聞いてもらうだけでもいいんじゃない?」
と伝えてみる方法があります。
もちろん、実際の診療では診察や検査が行われる場合があります。
「絶対に検査をしない」「薬は出ない」などと約束するのではなく、「まず相談してみよう」という気持ちで受診を考えてみましょう。
声かけは、どれか一つではなく組み合わせて
ここで紹介した声かけは、どれか一つを使えば必ず受診できるというものではありません。
本人の性格や、そのときの気持ちによっても反応は変わります。
たとえば、
「最近眠れなくて困っているから、先生に相談してみない?」
と伝えて、
「私も相談したいことがあるから、一緒についてきてくれない?」
と続ける。
あるいは、身近な人の経験を伝えて、
「まずは先生に話を聞いてもらおうよ」
と声をかける。
このように、いくつかの方法を組み合わせてもよいでしょう。
大切なのは、本人の気持ちを聞きながら、受診を「連れて行かれる場所」ではなく、「困っていることを相談する場所」と捉えてもらうことです。
受診前に、病院へ一声かけておく
本人が受診を嫌がっている場合は、予約の際などに、そのことを医療機関へ伝えておくことも大切です。
「本人に受診への抵抗があります」
「病院に行きたくないと言っています」
「家族から伝えておきたいことがあります」
など、事前に伝えてみましょう。
実際の医療現場でも、本人が受診を拒否しているという相談はよくあります。
あらかじめ状況を伝えておくことで、医療機関側でも本人への声かけや受診時の対応について相談できる場合があります。
「本人が嫌がっているから、病院には言わないほうがいい」と考えず、まずは一声かけてみましょう。
家族だけで受診できるとは限らない
本人がどうしても受診を拒否していると、
「本人が行かないなら、家族だけで病院に相談できないの?」
と考えることもあるでしょう。
ただし、医療機関での診察は、基本的に本人が受診することが前提です。
一方で、本人が受診できない場合に、家族からの相談に対応している医療機関もあります。
ただし、これはすべての医療機関で行われているわけではありません。
「本人が受診を拒否しているのですが、家族から相談することはできますか?」
「受診前に家族から状況を伝えることはできますか?」
など、事前に医療機関へ確認しておきましょう。
家族だけで相談できたとしても、それだけで本人の診断や治療ができるとは限りません。
まずは医療機関に事情を伝え、「本人が受診を拒否している場合、どのように進めればよいか」を相談することが大切です。
本人には言いにくいことは、事前にメモしておく
家族から見ると、本人には伝えにくい変化があるかもしれません。
たとえば、
・以前より怒りっぽくなった
・夜眠れなくなった
・昼夜逆転している
・薬を飲み忘れることが増えた
・家族への疑いが強くなった
・落ち着かず歩き回ることがある
などです。
こうした情報は、診察の参考になります。
「いつ頃から」「どのようなことが」「どのくらいの頻度で」起きているのかを、簡単にメモしておくと伝えやすくなります。
本人の前では話しにくい内容がある場合は、受診前に医療機関へ「家族から伝えたいことがあります」と相談しておくのもよいでしょう。
無理に説得することだけが方法ではありません
本人が受診を拒否すると、家族も焦ってしまいます。
「どうして分かってくれないの?」
「このままでは困る」
「絶対に病院へ行かないと」
と、つい強く言ってしまうこともあるでしょう。
でも、本人にとっては、受診そのものが大きな不安になっているのかもしれません。
まずは、
「どうして病院に行きたくないの?」
と、本人の気持ちを聞いてみることも大切です。
そして、その不安を一つずつ整理しながら、本人が受診を受け入れやすい方法を一緒に考えていきましょう。
「病院へ連れて行く」のではなく、
「困っていることを一緒に相談しに行く」
という視点に変えてみる。
それだけでも、声のかけ方は少し変わってくるかもしれません。
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