なぜ怒るの?
「最近、利用者さんが怒りっぽくなった気がする」
「さっきまで穏やかだったのに、急に怒り出してしまった」
介護の現場で、このような経験をしたことはありませんか?
認知症の方の怒りに戸惑い、「どう対応したらいいのだろう」と悩む介護職の方は少なくありません。
しかし、その怒りは本当に「怒りたい」という気持ちなのでしょうか。
私は心療内科で勤務する中で、「怒り」は多くの場合、その人の本当の気持ちを伝えるサインだと感じています。認知症のある方も同じように、不安や悲しみ、戸惑いを抱え、それが怒りという形で表れることがあります。
認知症だから怒りっぽくなる、とは限らない
「認知症になると怒りっぽくなる」というイメージを持つ方もいます。
しかし、すべての認知症の方が怒りっぽくなるわけではありません。
認知症の種類や症状、その日の体調や環境によっても様子は大きく異なります。
まずは、「認知症だから仕方ない」と決めつけず、その人自身を理解しようとする姿勢が大切です。
記憶は薄れても、感情は残ることがあります
読売新聞の医療・介護コラムでも、認知症の方の感情について紹介されていました。
記事では、新しい出来事を覚えることが難しくなっても、嬉しかったことや悲しかったこと、不安だった気持ちなどの感情は残ることがあると紹介されています。また、怒っているように見える背景には、不安や悲しみ、自尊心の傷つきなどが隠れている可能性があると解説されていました。
この考え方は、介護現場でもとても大切な視点だと思います。
例えば、
- 強い口調で注意された。
- 急かされてしまった。
- 周囲の人が困った表情をしていた。
出来事そのものは後から思い出せなくても、「嫌な気持ちだった」「悲しかった」という感情だけが残ることがあります。
怒りの裏側には「助けて」の気持ちがある
認知症になると、
- 思い出せない。
- 話についていけない。
- できていたことが難しくなる。
そんな場面が少しずつ増えていきます。
「どうして思い出せないんだろう」
「迷惑をかけているのではないか」
本人も不安や焦りを感じているかもしれません。
その気持ちをうまく言葉で伝えられず、怒りとして表現していることがあります。
怒りだけを見ると対応に困ってしまいますが、その奥にある気持ちを考えることで、関わり方が変わってきます。
介護職だからこそできる関わり
認知症の方は、言葉だけではなく、表情や声のトーン、周囲の雰囲気から安心感を受け取っていることがあります。
忙しい時間帯ほど難しいですが、
- 穏やかな表情で話す。
- ゆっくりと落ち着いた声で声をかける。
- 否定する前に気持ちを受け止める。
このような小さな積み重ねが、不安を和らげるきっかけになります。
レクリエーションの時間も「安心」を届ける時間
レクリエーションは、楽しむことだけが目的ではありません。
「できた」
「楽しかった」
「今日も笑えた」
そんな小さな成功体験や安心感を積み重ねる時間でもあります。
安心できる雰囲気の中で過ごす時間は、不安や緊張を和らげ、穏やかな表情につながることがあります。
だからこそ、レクリエーションを担当する私たちがつくる空気や関わり方には、大きな意味があるのです。
まとめ
認知症の方の怒りは、困らせようとしている行動ではなく、不安や悲しみ、戸惑いを伝えるサインなのかもしれません。
怒りだけを見るのではなく、「この方は今、どんな気持ちなのだろう」と一歩立ち止まって考えてみることが、よりよいケアにつながります。
介護の仕事は、身体だけでなく「心」に寄り添う仕事でもあります。
今日のレクリエーションや日々の声かけが、利用者さんにとって安心できる時間となり、笑顔につながることを願っています。
参考:読売新聞『ヨミドクター』(2026年6月22日掲載)


