認知心理学を使ってみよう!
「楽しみながらできる脳トレレクを取り入れたい」
「いつも同じようなゲームになってしまう」
介護レクリエーションでは、計算や間違い探しだけでなく、「覚える」「思い出す」「頭の中で情報を整理する」といった力を使うゲームもおすすめです。
今回は、認知心理学で知られているワーキングメモリ・初頭効果・新近効果(親近効果)・マジックナンバー±7をヒントにした、高齢者向けの脳トレレクを5つ紹介します。
特別な道具を使わずにできるものも多いので、デイサービスや介護施設でのレクリエーションにも取り入れやすい内容です。
まず知っておきたい4つの言葉
今回のレクリエーションに関係する言葉を、簡単に説明します。
①ワーキングメモリ
ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保持しながら、その情報を使って考えたり判断したりする働きです。
例えば、
「スーパーで牛乳、卵、りんごを買ってきて」
と言われたとき、買い物をするまでその情報を頭の中に置いておく必要があります。
このように、
聞く → 覚える → 頭の中で保持する → 思い出す
という作業には、ワーキングメモリが関係しています。
今回紹介する「覚えて答える」タイプの脳トレでも活用できます。
②初頭効果
初頭効果とは、最初に提示された情報が記憶に残りやすくなる現象です。
例えば、
「りんご・帽子・犬・時計・桜・傘」
と聞いたとき、最初の「りんご」が思い出しやすくなることがあります。
これが初頭効果です。
レクリエーションでは、
「最初に言った言葉を覚えてください」
というように、最初の情報に注目してもらうゲームに活用できます。
③新近効果(親近効果)
新近効果とは、最後に提示された情報が記憶に残りやすくなる現象です。
「親近効果」と表記されることもあります。
先ほどの、
「りんご・帽子・犬・時計・桜・傘」
という言葉なら、最後に聞いた「傘」が思い出しやすくなることがあります。
つまり、情報の並びの中では、
最初の情報 → 初頭効果
最後の情報 → 新近効果(親近効果)
という特徴があります。
この2つを利用すると、「最初と最後を覚える」というシンプルな脳トレレクができます。
④マジックナンバー±7
マジックナンバー±7は、人が一度に記憶できる情報量について説明するときに知られている考え方です。
一般的には、
「7±2個程度」
の情報を一時的に保持できるという考え方で知られています。
ただし、誰でも必ず7個覚えられるという意味ではありません。
年齢や個人差、集中力、情報の種類などによって、覚えられる量は変わります。
そのため、高齢者向けのレクリエーションでは、最初から7~9個を覚えてもらうのではなく、3~5個程度から始めて、参加者の様子を見ながら増やすとよいでしょう。
認知心理学を使った脳トレレク
では、実際に認知心理学を使った脳トレレクを紹介します。
脳トレレク①「最初と最後を覚えて!」
【ねらい】
- ワーキングメモリ
- 初頭効果
- 新近効果(親近効果)
- 注意力
【準備するもの】
特別な道具は必要ありません。
【遊び方】
参加者に5~7個程度の言葉を読み上げます。
例えば、
「りんご・帽子・犬・時計・桜・傘」
と読み上げます。
その後、質問します。
「最初に言った言葉は何でしたか?」
「最後に言った言葉は何でしたか?」
答えられたら、さらに難易度を上げます。
「3番目に言った言葉は何でしたか?」
などと聞いていきます。
【このゲームのポイント】
最初の「りんご」は初頭効果、最後の「傘」は新近効果(親近効果)によって、思い出しやすくなる可能性があります。
最初は「最初」と「最後」だけを質問し、慣れてきたら途中の言葉も質問すると、難易度を調整できます。
脳トレレク②「数字を覚えて、順番に言おう!」
【ねらい】
- ワーキングメモリ
- 注意力
- 記憶力
【遊び方】
数字を3~5個程度読み上げます。
例えば、
「3・8・1・6」
と読み上げ、
「今から言った数字を順番どおりに言ってください」
と伝えます。
答えは、
「3・8・1・6」
です。
慣れてきたら数字を増やします。
さらに難しくする場合は、
「今度は逆から言ってください」
とします。
「3・8・1・6」
↓
「6・1・8・3」
と答えてもらいます。
【難易度の調整】
初級:3個
中級:4~5個
上級:6個程度
応用:逆から答える
参加者の様子を見ながら、無理のない範囲で調整しましょう。
脳トレレク③「買い物リスト記憶ゲーム」
【ねらい】
- ワーキングメモリ
- 記憶力
- 注意力
日常生活と結びつけやすく、会話にも発展させやすいゲームです。
【遊び方】
「今日はスーパーに買い物に行きます。買うものを読み上げますので覚えてください」
と設定します。
そして、
「牛乳・りんご・卵・バナナ・パン・豆腐」
と買うものを読み上げます。
その後、
「何を買うんでしたっけ?」
と質問します。
慣れてきたら、
「最初に言ったものは?」
「最後に言ったものは?」
「パンの前に言ったものは?」
など、質問を変えていきます。
【このゲームのポイント】
聞いた買い物リストを一時的に頭の中に保持するため、ワーキングメモリを使います。
また、最初の「牛乳」は初頭効果、最後の「豆腐」は新近効果(親近効果)と関連づけて考えることができます。
覚える項目数は、まず3~5個程度から始め、参加者の様子を見ながら増やしましょう。
脳トレレク④「消えた言葉はどれ?」
【ねらい】
- ワーキングメモリ
- 注意力
- 記憶力
【遊び方】
まず、6個程度の言葉を読み上げます。
例えば、
「桜・電車・猫・傘・時計・りんご」
です。
参加者に覚えてもらったら、もう一度言葉を提示します。
今度は1つだけ抜きます。
「桜・電車・猫・時計・りんご」
そして、
「なくなった言葉は何でしょう?」
と質問します。
答えは、
「傘」
です。
【難易度の調整】
最初は4~5個程度から始めて、慣れてきたら6個、7個と増やします。
さらに難しくする場合は、2つの言葉を抜いて、
「なくなった言葉を2つ探してください」
としてもよいでしょう。
脳トレレク⑤「最初に言ったのはどれ?」
【ねらい】
- 初頭効果
- ワーキングメモリ
- 注意力
【遊び方】
まず、
「これから言う言葉のうち、最初の言葉を覚えておいてください」
と伝えます。
例えば、
「犬・桜・時計・みかん・電車・帽子」
と読み上げます。
その後、選択肢を出します。
「最初に言ったのはどれでしょう?」
A:時計
B:犬
C:帽子
正解は、
B:犬
です。
【このゲームのポイント】
「全部覚えてください」とすると難しく感じる方でも、
「最初の言葉だけ覚えてください」
と伝えることで、取り組みやすくなります。
また、選択肢を用意することで、自由に答えるよりも参加しやすくなります。
脳トレレクを楽しむための3つのポイント
① 最初は簡単な問題から
脳トレだからといって、最初から難しい問題にする必要はありません。
「できた!」という経験が、次の参加につながります。
3個程度の言葉や数字から始め、慣れてきたら少しずつ増やしていきましょう。
② 正解することだけを目的にしない
記憶力には個人差があります。
答えられなかったときも、
「惜しい!」
「あと少しでしたね」
「一緒に思い出してみましょう」
など、安心して参加できる声かけを意識しましょう。
脳トレでは、正解数だけでなく、考えることや会話を楽しむことも大切です。
③ 身近な言葉を使う
難しい言葉を使う必要はありません。
例えば、
- 食べ物
- 季節のもの
- 動物
- 家庭用品
- 昔の道具
- 昔の遊び
など、参加者にとって身近な言葉を使ってみましょう。
「昔はこういう買い物をしたね」
「この果物はよく食べたね」
など、記憶ゲームから思い出話や会話につながることもあります。
まとめ
今回紹介した5つのゲームは、ただ「たくさん覚える」ことを目的にした脳トレではありません。
ワーキングメモリ
→ 情報を一時的に保持しながら、考えたり使ったりする働き
初頭効果
→ 最初に提示された情報が記憶に残りやすい現象
新近効果(親近効果)
→ 最後に提示された情報が記憶に残りやすい現象
マジックナンバー±7
→ 一度に扱える情報量には限りがあるという考え方
こうした記憶の特徴を知っておくと、「なぜこのレクをするのか」を意識しながら、参加者に合わせて難易度を調整できます。
介護レクリエーションでは、難しい問題を解くことだけが目的ではありません。
「思い出せた」「答えられた」「みんなで笑えた」
という経験も大切です。
どの脳トレレクも特に準備するものがなくても取り組めますが、ホワイトボードに単語を書く、単語に合わせた絵カードを提示する等の工夫があると、更に難易度を調整することができます。
参加者の様子を見ながら、無理のない難易度で楽しんでみてください。

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