高齢の親を施設に入れるということ|家族が持っておきたい5つの心構え

介護の知識

施設入所を考える

「できることなら、最後まで家で過ごしてほしい」

高齢の親の介護をしていると、そう願うことがあると思います。

住み慣れた家で過ごしてほしい。
できることなら、最後まで家族のそばにいてほしい。

でも、介護を続ける中で、

「このまま家で介護を続けるのは難しい」

と思う日が来ることがあります。

施設を考え始めても、

「親を施設に入れるなんて申し訳ない」
「自分がもっと頑張ればいいのでは」
「施設に入れたら、親を見捨てることになるのでは」

そんな気持ちを抱えてしまうこともあるでしょう。

わたし自身も、ALSを患った父を見ていて、「できることなら家に帰してあげたい」と思いました。

けれど、実際に自宅で受け入れることを考えると、

高齢の母が中心になって介護するのか。
私が仕事を辞めて実家に通うのか。
まだ幼い子どもの生活はどうするのか。

さまざまな現実がありました。

「帰ってきてほしい」という気持ちだけでは、決められないこともあります。

今でも父が「家に帰りたい」と呟くことがあります。

その言葉を聞くと、胸が痛みます。

それでも、父の生活だけではなく、母や私たち家族の生活も考えなければなりません。

この経験を通して、施設を考えるときには、親への愛情と、家族が無理なく生活を続けていくことの両方を大切にする必要があると感じました。

5つの心構え

今回は、そんな家族のために、施設を考えるときに持っておきたい5つの心構えをまとめます。

①「施設に入れる=親を見捨てる」ではない

施設入所を考えたとき、最初に出てくるのが罪悪感かもしれません。

「家で看てあげられない自分は、親不孝なのではないか」

そんなふうに考えてしまうこともあります。

でも、自宅で介護できるかどうかと、親を大切に思っているかどうかは別の問題です。

介護には、家族の気持ちだけではどうにもならないことがあります。

介護する人の体力や年齢、仕事、子育て、住んでいる場所、必要な医療的ケアなど、さまざまな事情があります。

「自宅で介護することが難しい」と判断することは、親を大切にしていないということではありません。

むしろ、親のこれからの生活を考えて、現実的な方法を探しているともいえます。

②「もう限界」と感じることは、愛情が足りないからではない

介護をしていると、

「もう無理かもしれない」

と思うことがあります。

夜間の介助。
排泄の介助。
認知症による対応。
転倒への不安。
医療的なケア。

介護が長く続けば、心も体も疲れてしまいます。

それでも、

「親のために頑張らなければ」

と、自分を奮い立たせてしまう人もいます。

でも、「限界」と感じることは、親への愛情が足りないからではありません。

これまで頑張ってきたからこそ、限界が近づいているのかもしれません。

家族が倒れてしまえば、介護を続けることもできなくなります。

自分の生活や心身を守ることも、介護の一部です。

③「家に帰してあげたい」と「家では暮らせない」は両立していい

親が「家に帰りたい」と言えば、

「帰してあげたい」

と思うのは自然なことです。

私自身もそうでした。

でも、実際に自宅で生活するためには、誰が介護をするのか、どのような支援が必要なのかを考えなければなりません。

「家に帰してあげたい」という気持ちと、

「今の家族の状況では、自宅で生活するのは難しい」という判断。

この二つは、矛盾していてもいいのだと思います。

どちらも、親を大切に思っているからこそ生まれる気持ちだからです。

大切なのは、どちらかの気持ちを無理に消すことではなく、

「どうすれば親も家族も、これからの生活を続けていけるのか」

を考えることなのだと思います。

④ 親の人生も、家族の人生も大切にする

介護では、「親のために何ができるか」を考えることが多くなります。

もちろん、それは大切なことです。

でも、介護する家族にも生活があります。

仕事があります。
子育てがあります。
自分自身の体調や人生があります。

「親のためなら、家族がすべてを犠牲にするべき」

と考えてしまうと、介護する側も追い詰められてしまいます。

親の人生を大切にすることと、家族の人生を大切にすること。

どちらか一方ではなく、両方を大切にする方法を探していいのです。

施設を利用することも、そのための選択肢の一つです。

⑤ 施設に入った後も、家族であることは変わらない

施設に入ったら、家族としての役割がなくなるわけではありません。

面会に行く。
話をする。
好きなものを持っていく。
一緒に食事をする。
施設の職員と相談する。

できることは、その家族によって違います。

「家で介護する」という形から、

「専門職の力を借りながら、親の生活を支える」という形に変わる。

そう考えることもできるのではないでしょうか。

施設に入ったからといって、親との関係が終わるわけではありません。

介護の形が変わるだけです。

「本当は家で過ごしてほしい」という気持ちは消さなくていい

施設を選ぶことになっても、

「本当は家で過ごしてほしかった」

という気持ちが残ることはあると思います。

「もっとできたことがあったのではないか」と思うこともあるでしょう。

それでいいのだと思います。

無理に納得しなくてもいい。

「家に帰してあげたい」と思いながら、

「自宅で介護することは難しい」と判断してもいい。

その両方の気持ちを抱えたままでもいいのです。

介護には、誰にとっても正解になる答えはありません。

家で過ごせる人もいれば、施設の力を借りる人もいます。

大切なのは、家族の誰か一人が限界まで頑張り続けることではなく、親も家族も、これからの生活を続けていける方法を探すこと。

施設に入れることは、親を見捨てることではありません。

家族だけではできないことを、誰かの力を借りながら支えていく。

それも、親を大切にする一つの形なのだと思います。

「家に帰してあげたい」

その気持ちがあること自体、親を大切に思っている証なのかもしれません。

だからこそ、家族だけで抱え込まなくていい。

親の人生も、家族の人生も、どちらも大切にできる介護を探していきたいと思います。

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