2025年の国民生活基礎調査から見えてきたこと
「一人暮らしの高齢者が増えている」
高齢化が進む日本では、以前から言われてきたことです。
しかし、2025年の国民生活基礎調査の結果を改めて見て、私はその数字に驚きました。
65歳以上の人がいる世帯のうち、53.2%が単独世帯でした。
つまり、高齢者がいる世帯の半分以上が一人暮らしです。
さらに、要支援・要介護認定を受けている人がいる在宅世帯でも、33.2%が単独世帯となっています。
この数字を見たとき、私は「高齢者が増えている」ということだけではなく、その先にある問題を考えました。
家族がいない、あるいは家族から十分な支援を受けられない高齢者の生活を、これから誰が支えていくのでしょうか。
家族が担ってきた「介護保険ではない仕事」
高齢者が家族と暮らしている場合、家族はさまざまなことをしています。
介護そのものだけではありません。
例えば、
- お金の管理
- 書類や行政手続き
- 買い物
- 通院の付き添い
- 薬の管理
- 郵便物の確認
- 電話や連絡の対応
- 家の中のちょっとした困りごとの対応
- 入院や施設入所の際の手続き
- 緊急時の連絡
こうしたことは、毎日の生活の中では当たり前すぎて、あまり「介護」として意識されていないかもしれません。
しかし、家族がいなくなると、これらの仕事を誰かが担わなければ生活が成り立たなくなることがあります。
ここに、これからの介護を考えるうえで大きな課題があります。
介護保険だけでは生活のすべてを支えられない
介護が必要になれば、介護保険サービスを利用できます。
訪問介護や通所介護など、生活を支えるためのさまざまなサービスがあります。
しかし、介護保険ですべての生活上の困りごとを解決できるわけではありません。
例えば、
「銀行の手続きを一緒にしてほしい」
「重要な書類を管理してほしい」
「入院するときの手続きをどうすればいい?」
「亡くなった後のことを誰に頼めばいい?」
といった問題は、単純に介護サービスを利用すれば解決するものではありません。
医療についても同じです。
厚生労働省は、身寄りがない人の入院や医療に関する意思決定を支援するためのガイドラインを作成しています。
つまり、「身寄りがないことによって医療を受ける際に生じる困難」は、すでに国が対応を進めている課題なのです。
「では、誰がやるの?」という問題
家族がいれば、家族が担っていたかもしれない仕事。
その家族がいなければ、誰かが代わりに担う必要があります。
では、誰が担うのでしょうか。
介護職でしょうか。
医療職でしょうか。
ケアマネジャーでしょうか。
行政でしょうか。
地域でしょうか。
成年後見制度でしょうか。
民間の生活支援サービスでしょうか。
おそらく、答えは一つではありません。
実際には、その人の状況に応じて複数の支援を組み合わせる必要があります。
厚生労働省も、身寄りのない高齢者等への支援について、相談・調整窓口を設けたり、日常生活の支援に加えて入院・入所の手続きや死後の事務まで支援したりするモデル事業を実施しています。
そして、もう一つ考えなければならない「お金」
ここで無視できないのが、経済的な問題です。
一人暮らしの高齢者がすべて経済的に困っているわけではありません。
しかし、十分な資力がないために民間サービスを利用できない人もいます。
厚生労働省のモデル事業でも、十分な資力がなく民間による支援を受けられない人や、地域の社会資源が乏しい人が支援の狭間に落ちないようにすることが課題として示されています。
これは非常に重要なポイントです。
「家族がいないなら、お金を払ってサービスを利用すればいい」
という簡単な話ではありません。
家族もいない。
頼れる人もいない。
そして、お金も十分にない。
そういう人がいた場合、誰が生活を支えるのでしょうか。
すでに医療・介護の現場は、この問題に直面している
これは、将来起こるかもしれない問題だけではありません。
介護や医療の現場では、すでに「家族がいない」「家族も高齢」「遠方に住んでいる」「家族がいても支援できない」といったケースに出会うことがあります。
そして、そのたびに現場では、
「この人の生活をどうすればいいのか」
を考えなければなりません。
本来のサービスの範囲を超える問題であっても、目の前に困っている人がいれば、完全に放っておくことはできません。
結果として、医療職や介護職、ケアマネジャーなどが、さまざまな機関に連絡したり、家族に代わって調整したりすることがあります。
一つひとつは小さな対応に見えるかもしれません。
しかし、それが積み重なれば、現場の負担は大きくなります。
「一人の高齢者に必要な支援」が増えていく
独居高齢者が増えるということは、単純に「介護サービスを利用する人が増える」というだけではありません。
家族が担っていた部分まで含めて考える必要があります。
例えば、
家族と同居している高齢者
→ 家族が日常生活の細かな部分を支える
→ 必要な部分を医療・介護サービスが支援する
という形だったものが、
一人暮らしの高齢者
→ 日常生活の支援
→ 医療
→ 介護
→ 金銭管理や権利擁護
→ 手続き
→ 緊急時の対応
→ 入院・入所時の支援
→ 地域とのつながり
など、複数の支援を組み合わせなければならなくなる可能性があります。
つまり、一人の高齢者を地域で支えるために必要な「人」と「つながり」が増えていくのです。
現場の頑張りだけでは限界がある
ここで考えたいのが、医療・介護職の人手不足です。
高齢者が増える。
独居高齢者も増える。
家族が担える支援が減る。
一方で、医療や介護を支える人材には限りがあります。
この状況で、
「現場の職員が頑張れば何とかなる」
と考えるのは、もう難しいのではないでしょうか。
現場ではすでに、制度と制度の間にある問題を、人と人とのつながりや職員の努力で埋めている部分があります。
しかし、そこにも限界があります。
支援が必要な人が増えていく一方で、支える側の負担まで増え続ければ、医療・介護の現場そのものが疲弊してしまいます。
これから必要なのは「一つの場所で抱えない仕組み」
では、どうすればいいのでしょうか。
私は、すべてを介護施設や医療機関に任せるのではなく、地域全体で支える仕組みが必要だと考えています。
医療、介護、福祉、行政、地域、成年後見など、それぞれができることを持ち寄る。
そして、一人の職種や一つの施設がすべてを抱え込まない。
厚生労働省が進めている「身寄りのない高齢者等」への支援でも、相談・調整窓口を設け、地域の社会資源を組み合わせて支援する考え方が示されています。
もちろん、地域によって利用できるサービスや人材には差があります。
また、制度を整えればすべて解決するわけでもありません。
だからこそ、これからもさまざまな方法を考えていく必要があります。
「誰が支えるのか」という問いを、社会全体で考える
2025年の国民生活基礎調査で示された「高齢者世帯の53.2%が一人暮らし」という数字。
私は、この数字を単なる統計として見ることができませんでした。
その一人ひとりに生活があり、家族がいる人もいれば、身寄りがない人もいます。
介護が必要になったとき、認知症になったとき、入院するとき、判断が難しくなったとき。
そのときに、誰が支えるのか。
これから独居高齢者がさらに増えていけば、この問いはますます身近なものになっていくでしょう。現に「2040年問題」として提起されています。
そして、すでにその課題に直面しているのが、医療・介護の現場です。
家族が担ってきた支援を、これから誰が、どのように支えていくのか。
答えは一つではないと思います。
ただ一つ言えるのは、現場の職員の頑張りだけで埋め続けるには、限界があるということです。
これからの介護を考えるとき、「介護サービスをどう増やすか」だけではなく、
「家族がいない人の生活を、地域社会全体でどう支えるのか」
という視点も、ますます重要になっていくのではないでしょうか。
まとめ
独居高齢者の増加は、単に「一人で暮らす高齢者が増える」という問題ではありません。
家族が担ってきた日常生活の支援や手続き、緊急時の対応などを、誰が担うのかという問題にもつながります。
そして、十分な資力がない人の場合、民間サービスだけに頼ることも難しくなります。
これからの医療・介護には、
- 一人暮らしの高齢者を支える仕組み
- 制度の隙間を埋める生活支援
- 医療・介護・福祉・行政・地域の連携
- 支援を一つの施設や職種に集中させない仕組み
が必要になっていくでしょう。
高齢者を支えることは、介護施設だけの仕事ではありません。
「誰もが安心して歳を重ねられる社会をどうつくるか」
それは、これから私たち一人ひとりが考えていく問題なのだと思います。
※本記事は、厚生労働省「2025(令和7)年国民生活基礎調査」および厚生労働省が公表する「身寄りのない高齢者等」への支援に関する資料を参考に作成しています。
厚生労働省「2025(令和7)年国民生活基礎調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21tyousa.html?utm_source=chatgpt.com
厚生労働省「身寄りのない高齢者等」への支援に関する資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202622_00021.html?utm_source=chatgpt.com
厚生労働省「身寄りがない人への対応について」
あわせて読みたい


