どうして辞めていくのか?
「介護の仕事は好きだけど、職場の人間関係に疲れてしまった」
「頑張っているのに、なんだか報われない」
「このまま医療・福祉の仕事を続けていいのかな」
介護や医療、福祉の仕事をしていると、そんな気持ちになることはないでしょうか。
私自身、これまで長く現場に関わってきました。
頼りになる看護師さん、利用者さん思いの介護士さん、フットワークの軽いケアマネジャーさん。
現場には、本当に素敵な人がたくさんいます。
一方で、仕事に疲れ、心身ともに疲弊し、介護や医療福祉の仕事を離れていった人たちもたくさん見てきました。
「仕事が嫌いだから辞めた」という人ばかりではありません。
人間関係や仕事の負担、働く環境など、さまざまな悩みを抱えた末に離職を選ぶ人もいます。
私自身、何度も「もう無理だ、しんどい。辞めたい」と泣いたことがあります。「もうここでは働けない」と実際に転職をしたこともあります。
そんな経験から、
「介護・医療・福祉に関わる人が、少しでも長く、無理なく働けるような情報を届けたい」
と思い、このブログ「ここレク日和」を始めました。
今回は、介護職員が実際にどのような環境で働き、どんなことを感じているのか、公益財団法人介護労働安定センターが実施している「介護労働実態調査」から考えてみたいと思います。
「介護労働実態調査」とは?
「介護労働実態調査」は、公益財団法人介護労働安定センターが毎年度実施している調査です。
厚生労働省の委託を受けて行われており、介護事業所の雇用管理や介護労働の実態、介護労働者の就業状況や仕事に対する意識などを明らかにすることを目的としています。
調査は大きく2つに分かれています。
- 介護事業所を対象とした「事業所における介護労働実態調査」
- 介護現場で働く人を対象とした「介護労働者の就業実態と就業意識調査」
後者では、労働条件や賃金、能力開発、仕事への満足度、悩みなどについて調査されています。
令和7年度の調査では、事業所調査で8,955件、労働者調査で20,675件の有効回答がありました。
かなり多くの介護事業所・介護労働者の声を集めた調査といえます。
この調査は介護職を対象としたものですが、そこで示されている「人手不足」「職場の人間関係」「仕事の負担」「働きがい」といったテーマは、医療や障害福祉、児童福祉など、さまざまな対人援助職にも通じる部分があります。
介護職員は「働きがい」を感じている
介護の仕事には、大変なことがたくさんあります。
人手不足、身体的な負担、認知症の方への対応、利用者さんやご家族との関係、職場の人間関係など。
それでも、介護の仕事を続けている人には、この仕事だからこそ感じられる「やりがい」があります。
令和7年度の調査では、
訪問介護員の約7割、介護職員の約6割が「働きがいがある」と回答しています。
つまり、介護職は「大変だから嫌な仕事」という単純なものではありません。
大変さを感じながらも、仕事そのものに意味ややりがいを感じている人が多くいるのです。
ここは、とても大切なところだと思います。
そして、この「働きがい」は介護職だけのものではありません。
患者さんの回復を支える看護師、生活機能の向上を支援するリハビリ職、相談者の生活を一緒に考えるソーシャルワーカー、子どもの成長を見守る保育士など、医療・福祉の仕事には、人の人生に関わるからこそ感じられるやりがいがあります。
誰かの役に立てたと感じられること。
相手の変化や成長を近くで見られること。
「ありがとう」と言ってもらえること。
こうした経験が、仕事を続ける力になることもあります。
それでも、介護・医療・福祉職を辞める人がいるのはなぜ?
「仕事にやりがいを感じている人が多いなら、なぜ介護や医療福祉の仕事を辞める人がいるの?」
そう思う方もいるかもしれません。
介護職の離職には、さまざまな理由があります。
過去の介護労働実態調査では、「職場の人間関係に問題があったため」という理由が、介護職を辞める大きな要因の一つとして挙げられています。
令和6年度の調査では、直前の介護職を辞めた理由として「職場の人間関係に問題があったため」が34.3%で、主な離職理由の一つとなっていました。
その具体的な内容として、
- 上司の思いやりのない言動やきつい指導、パワハラなど
- 上司の管理能力が低い、指示が不明確
- 同僚のきつい言い方、悪口、嫌み、嫌がらせなど
といった問題が挙げられています。
介護の仕事そのものではなく、「人との関係」によって仕事を続けることが難しくなるケースがあるのです。
また、介護・医療・福祉の現場では、多職種で連携して支援を行います。
看護師と介護職、医師と看護師、リハビリ職とケアマネジャー、相談員と現場職員など、立場や専門性の異なる人たちが協力しなければなりません。
その分、情報共有の不足、役割の違い、価値観の違い、指示系統の分かりにくさなどが、ストレスにつながることがあります。
「人間関係に疲れた」は、あなただけではない
介護や医療福祉の仕事は、人と人との関わりが中心です。
利用者さんや患者さんとの関係だけではありません。
- 同僚
- 上司
- ご家族
- 他事業所の職員
- 行政や関係機関の担当者
たくさんの人と連携しながら仕事をします。
だからこそ、人間関係のストレスが生まれることがあります。
「私のコミュニケーション能力が低いからかな」
「もっと我慢しなければいけないのかな」
「こんなことで悩む自分が弱いのかな」
そんなふうに、自分を責めてしまう人もいるかもしれません。
でも、介護労働実態調査を見ると、職場の人間関係について悩んでいる介護職員は決して珍しくありません。
そして、同じような悩みは、医療や福祉の現場で働く人にも起こり得ます。
専門職同士の意見の違い、忙しさによる余裕のなさ、職種間の壁、上司や同僚との関係など、悩みの形は違っても、「人との関係に疲れる」という経験は、多くの対人援助職に共通しています。
だからこそ、悩んだときには「自分が悪い」と決めつける前に、少し立ち止まって考えてみてほしいと思います。
介護・医療・福祉の仕事を辞める前にできることもある
もちろん、すべての問題を自分の努力だけで解決することはできません。
ハラスメントや深刻な職場環境の問題など、個人で抱え込むべきではないケースもあります。
一方で、
- 苦手な人との距離を少し変えてみる
- 自分の気持ちを整理する
- アサーティブな伝え方を身につける
- 職種や立場の違いを理解する
- 情報共有の方法を見直す
- ストレスをため込まない方法を知る
- 信頼できる人に相談する
- 必要に応じて職場以外の相談窓口を利用する
など、自分を守るためにできることもあります。
「この仕事を続けるか、辞めるか」の二択だけではありません。
続けるために環境を変えることもできます。
同じ職種のまま職場を変えることもできますし、別のサービス種別や施設、病院、事業所へ移ることもできます。
これまでの経験を生かして、別の職種や働き方を考えることもできます。
大切なのは、限界まで我慢してから選択するのではなく、自分の心身を守るために、早めに選択肢を持っておくことです。自分の手の内にいくつかの選択肢があるだけで「まあ、ここで無理しなくても別の道があるからね」と、余裕があるだけで不思議と乗り越えられるときもあります。
私が「ここレク日和」を始めた理由
私がこのブログを始めようと思ったのも、こうした経験がきっかけでした。
現場には、患者さんや利用者さん、ご家族のために努力している人がたくさんいます。
でも、頑張っている人ほど、自分のことを後回しにしてしまうことがあります。
利用者さんや患者さんのことを考え、職場のことを考え、周りの人に気を遣い、自分が疲れていることに気づかない。
そして、ある日突然「もう無理」となってしまう。
そんな人を少しでも減らしたい。
介護や医療福祉の仕事を続ける人にも、辞める人にも、
「この仕事には、こんな方法もある」
「こんな考え方もできる」
「こんなふうに自分を守ってもいい」
という選択肢を届けたい。
それが、私がこのブログを始めた理由の一つです。

ケアする人の「こころ」も大切にしたい
「ここレク日和」では、これまで介護レクリエーションを中心に、介護に役立つ情報を発信してきました。
これからはそれに加えて、
介護・医療・福祉職の人に向けた人間関係やストレス、こころのケア
についても取り上げていきたいと思っています。
たとえば、
- 人間関係に疲れたときの対処法
- 医療・福祉現場でのコミュニケーション
- 多職種連携を円滑にする考え方
- アサーティブな伝え方
- ストレスとの付き合い方
- 頑張りすぎない働き方
- 介護・医療福祉職におすすめの本
- 資格取得やキャリアの考え方
- 職場を変える前に考えておきたいこと
- 支援する人が自分を守るための方法
などです。
介護職として働くことを応援するだけではなく、看護師、リハビリ職、ケアマネジャー、相談員、保育士、障害福祉職など、医療・福祉に関わる方にも、
「自分自身を大切にしながら働く」
ための情報を届けていきたいと思っています。
まとめ
介護労働実態調査からは、介護職が抱えるさまざまな課題が見えてきます。
一方で、介護職の多くが仕事に「働きがい」を感じていることも分かります。
つまり、
介護の仕事が嫌なのではなく、働く環境や人間関係によって苦しくなっている人がいる。
私はここが大切なポイントだと思っています。
そして、このことは介護職だけでなく、医療・福祉の仕事にも共通する部分があります。
人を支える仕事には、大きなやりがいがあります。
その一方で、責任の重さや人間関係、業務量、感情労働によって、働く人自身が疲弊してしまうこともあります。
介護や医療福祉の仕事が好きなのに、職場の人間関係や働く環境で辞めてしまう。
そんな人を少しでも減らすために、私自身の経験や心理学の知識、介護現場での経験を生かして、これからも情報を発信していきたいと思います。
もし今、仕事や人間関係に疲れているなら、
「自分が弱いから」と一人で抱え込まないでください。
働き方を変えることも、誰かに相談することも、自分を守るための大切な選択肢です。
このブログが、介護や医療福祉の仕事をしている方にとって、少しでも「明日も頑張ってみよう」と思える場所になれば嬉しく思います。
参考資料・参考サイト
公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」
令和7年度「介護労働実態調査」では、事業所調査と介護労働者を対象とした就業実態・就業意識調査が実施されています。令和7年度調査は2025年10月に実施され、2026年7月29日に結果が公表されています。 (介護センター)
誰かに話を聞いてほしいとき
「こんなことで相談していいのかな」
「まだ病院に行くほどではないけれど、誰かに話を聞いてほしい」
そんなふうに感じることはありませんか?
悩みを誰かに話すことで、気持ちが少し楽になったり、自分の考えを整理できたりすることがあります。
相談先はひとつではありません。
今の自分に合った方法を選んでみましょう。
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電話・SNS・メールで相談できる窓口があり、仕事の悩みや人間関係のストレスなどについて相談できます。
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