こんな時、どうする?
認知症の利用者さんから、
「家に帰らなきゃ」
「母が待っている」
「財布を盗まれた」
と言われたとき、あなたはどのように対応していますか?
つい、
「ここがお家ですよ」
「お母さんはもう亡くなられていますよ」
と事実を伝えてしまうことはありませんか。
もちろん間違いではありません。しかし、その言葉がかえって利用者さんを混乱させたり、不安を強めてしまうこともあります。
そんなときに役立つのがバリデーション療法です。
この記事では、公認心理師・精神保健福祉士の視点から、バリデーション療法の基本とパーソン・センタード・ケアとの違いについて解説します。
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バリデーション療法とは?
バリデーション療法とは、認知症のある方の「気持ち」や「感じている世界」を否定せず受け止めるコミュニケーション方法です。
アメリカのソーシャルワーカー、ナオミ・フェイルによって提唱されました。
「事実が正しいかどうか」ではなく、
「その人は今、どんな気持ちなのか」
を大切にすることが特徴です。
なぜ否定しない方がよいの?
認知症では記憶や時間の感覚が変化するため、本人にとってはそれが現実です。
例えば、
「母が迎えに来る」
と言われたとき、
「もう亡くなっています」
と伝えると、その方は初めて知らされたような悲しみを何度も味わう可能性があります。
一方で、
「お母さんに会いたいんですね」
「優しいお母さんだったんですね」
と気持ちに寄り添うことで、不安が和らぐことがあります。
バリデーション療法の基本姿勢
次に、バリデーション療法で大切にしている基本姿勢をご紹介します。
①気持ちを受け止める
事実ではなく感情に注目します。
例)
利用者
「家へ帰ります」
介護職
「お家が恋しいんですね」
②否定しない
無理に現実へ戻そうとしません。
「違います」
「それは勘違いですよ」
という言葉はできるだけ避けます。
③共感する
安心できる表情や声のトーンも大切です。
言葉だけではなく、
- 相づち
- アイコンタクト
- ゆっくり話す
なども安心感につながります。
④思い出を引き出す
「どんなお仕事をされていましたか?」
「お母さんはどんな方でしたか?」
昔の思い出を話すことで、表情が和らぐ方も多くいます。
パーソン・センタード・ケアとの違い
混同されやすい2つですが、実は少し役割が違います。
| パーソン・センタード・ケア | バリデーション療法 |
| ケア全体の考え方 | コミュニケーション技法 |
| その人らしい生活を支える | 感情を受け止める |
| 生活歴・価値観を尊重する | 気持ちに寄り添う |
| 日常生活全般で活用 | 会話場面で活用 |
つまり、
バリデーション療法は、パーソン・センタード・ケアを実践するための具体的なコミュニケーション方法の一つと考えると理解しやすいでしょう。
心理師から見たポイント
認知症の方の言葉には、必ずしも文字どおりの意味だけがあるわけではありません。
例えば、
「家へ帰りたい」
という言葉の背景には、
- 安心したい
- 不安が強い
- 疲れている
- 誰かに会いたい
- 昔の生活に戻りたい
など、さまざまな気持ちが隠れていることがあります。
言葉の内容だけでなく、その背景にある感情やニーズを丁寧に理解することを大切にしています。
介護の現場でも、「何を伝えようとしているのだろう?」という視点を持つことで、対応の幅が広がります。
レクリエーションでも活かせる
バリデーション療法の考え方は、レクリエーションにも活かせます。
例えば、
歌のレクリエーションで昔の歌謡曲を歌ったとき、
「この歌、若い頃によく歌ったの」
という利用者さんには、
「どんな思い出がありますか?」
と声をかけてみましょう。
思い出を話すことで、自然と笑顔が見られたり、他の利用者さんとの会話が広がったりすることがあります。
レクリエーションは身体を動かすだけではなく、その人の人生を振り返り、周囲とつながる大切な時間にもなります。
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まとめ
バリデーション療法とは、認知症のある方の言葉を「正しい・間違い」で判断するのではなく、その背景にある感情に寄り添うコミュニケーション方法です。
一方、パーソン・センタード・ケアは、「その人らしさ」を尊重するケア全体の考え方を指します。
どちらにも共通しているのは、「目の前の利用者さんを一人の人として大切にする」という姿勢です。
日々の声かけを少し変えるだけでも、利用者さんの安心感や信頼関係は大きく変わることがあります。
ぜひ、明日からの介護やレクリエーションの場面で取り入れてみてください。
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